Going Alchemy





「と、言うわけで『第二十七回。ドキッ、ホムンクルスだらけの錬金術大会。〜どこまで人に近づけるか〜』に出場が決まったわ」

「姉さん、何がと言うわけで。なんだよ」

「そんな些細な事いいじゃない。それより、シェリーの事貸してくれない?」

「嫌だよ。せっかくうまく創れた子なのに姉さんに貸したらどうなるか……」

「いいじゃない。悪いようにはしないから」

――ギィ、バタン。

「おふぁようございまふ。御主人しゃま、お姉しゃま」

 不意に開いた扉に目をやると、寝ぼけ眼を擦っている可愛らしい少女、シェリーが立っていた。

「ああ、おはよう。シェリー」

「おはよう、シェリー。本当にいいところに来てくれたわね」

「?」

 言うが早いか、姉さんはシェリーを小脇に抱えて自分の研究室に突っ込んでいった。

――ぴゅうぅぅー。

 風が吹いた気がした。









Going Alchemy










 僕の名前はクロス=サレント。シヴァレント王国で錬金術師をしています。錬金術というのは、何も卑金属を貴金属にしたり、永遠の命を目指したりするわけではなく、お薬の様な医療品やホムンクルスつまり人造生命体の様な魔法チックな物を創ったりする事を言います。でも、一応の大義名分は賢者の石の精製なんですけど……。

 僕の姉さん、さっきシェリーを連れて行った――いや、むしろさらったって言った方が正しいのかな?――人の名前はマリア=サレント。マリアなんて、どこかの聖母みたいな名前だけど、それっぽいのは外見だけで中身はさっきのアレ。しかも、その外見に騙される男の人多いんだよね。何でだろう? 一応姉さんも錬金術師なんだけどその腕前は……はぁ。とある人をライバル視して色々やってるけど全戦全敗。いい加減諦めないかなぁ、本当に。

 次は、シェリー。さっき姉さんにさらわれた――やっぱりこの方が合ってる――女の子で、僕の創ったホムンクルス。成長不良にもならず失心もせずに、純粋無垢、清楚可憐に育ってくれてありがとう! 僕の愛娘よ、嗚呼、僕の女神さ……げふ、げふん。気を取り直して、そんな子だから、姉さんにどう侵されるか……うぅ。ちなみにシェリーは僕の事を御主人様、姉さんの事をお姉さま、って呼ぶんだけど。別に強制した訳じゃないよ。いや、本当に。

「……まぁ、こんなもんか」

 これ以上説明すると僕の性格が疑われる。もう遅いかもしんないけど。

「っと、こんな馬鹿な事してる暇ないんだっけ。姉さん、僕出かけてくるから!」

 ……無反応。別にいいけど。

「それじゃ、いってきま〜す……はぁ」









「王立アカデミー……名前だけは立派なんだけどな。っと、あの人探さないと」

 とりあえず、きょろきょろあたりを見渡すけど……。

「何で、誰もいないの?」

 おかしくない? 確かにお休みだけど教師すら誰もいないって。会議とか? それとも図書館に居るとか? まさか、全員そろって旅行とか? まさかね……。

 今だ、学園内を見回していると、掲示板に不吉な掲示物を発見してしまった。

『せっかくの夏期休暇なんで教師全員で旅行に行く事になりました。ううん、むしろしました。は〜と。一週間ほど戻らないので先生達に聞きたい事があった人はざんねぇ〜ん。帰ってくるまで待っていてね。学園長より愛を込めて。はぅと。あ、そうそう図書館は開けとくから好きに使ってね。ちゅっ』

 ……………………はい?

「何考えてるのこの人? 今日から? まさかね。まだ十時だし、ってことは昨日から……え? じゃあ、昨日連絡くれた後に出発したって事? ……あほかぁぁぁー!」

 虚しい……帰ろう。

 踵を返して帰ろうとしたとき後ろから声が――

……聞こえなかった。

 都合良すぎるよね、そんな展開。

「あっ、クロス君。よかった、来てくれてたんだ。ごめんね、誰もいなくて」

 前言撤回。やっぱあった。

「いいですよ、リリスさん。それにしても、いつもながら突飛ですよね。学園長」

 とりあえず、ありったけの笑顔で答えた。

「本当にごめんなさいね。お母様、ああいう人だから」

 リリスさんが、本当に申し訳なさそうに頭を下げてくれた。何かいい。

 この人が、リリスさん。姉さんにライバル視されている人。悪魔っぽい名前だけど、それっぽいのは、ちょっと妖しい外見だけで、性格は優しいし面倒見がいいし聡明だし、何て言うか聖母みたいなんです。でも、偶に呆けるんだよね。それも、盛大に。あの突飛な学園長が母親とは思えないほどいい人なんだけどさ。それにしても、鳶が鷹を生むってこういう事なんですね。ちなみに、姉さんとリリスさん外見はどっこいどっこいだけど、性格はまさに月とスッポンです。嗚呼、高嶺の花。

「……ス君…ロス君、クロス君」

「……へ? ど、どうしたんですか?」

「それはこっちの台詞ですよ。話しかけても反応してくれないですし、妙な笑みを浮かべてらしたから」

「な、何でもないですよ」

 やばかった。ひじょーにやばかった。本人の目の前であっちの世界に逝くとこだった。否、片足突っ込んでた。

「と、ところで、僕の事なんで呼んだんですか?」

 別に誤魔化さなくてもいいと思うけど、誤魔化すために話を進めた。って言うか、進めないとたぶん終わらない。

「あっ、そうでしたね。その事を説明しないといけませんよね。わたしってどうしてこう言う大事な事を……」

 やばい、止めないと永遠に沈んでく。って言うかまた話が進まない。

「リリスさん、とりあえず進めてください」

「ああっ、ごめんなさい。えっと、クロス君は『第二十七回。ドキッ、ホムンクルスだらけの錬金術大会。〜どこまで人に近づけるか〜』に出場なさるのですよね?」

「えっ? 出ませんよ。出るのは姉さん、もといシェリーのはずですけど」

「そうなのですか。マリアさんが……。それなら、大会条項を教えなくてもよろしいのですよね?」

「一応知っておきたいです。どうせ、アノ姉さんのことだから何も聞いてないで、目の前にいる敵を全員殺れ。とか、今頃シェリーに教えてそうだから……はぁ」

「クロス君の気持ちわかります。わたしのお母様も……ふぅ」

「お互い苦労しますね。本当に」

「そうですね……ふぅ。それでは、気を取り直して大会の説明をしますね。まず予選ですけど、ポイント制です。三種目やりまして。ポイントの多い上位三十二名が決勝トーナメントにでられます。点数は一位が百点であとは、五点ずつ下がっていきます。あとは、決勝トーナメントですが、これは普通のトーナメントです」

「えっと、リリスさん種目とかまだ決まってないんですか?」

「決まっていますよ。予選第一種目が、千キロ遠泳……」

 ……へ?

「次に、五千キロサイクリングレース……」

 ……は?

「最後は、一万キロマラソンです」

 ……おかしいだろ、絶対に。つうか、普通に鉄人レースやった方が早いだろ。

「マジですか?」

「はい。大マジです」

「第一、大会のサブタイトル無視してませんか? それに錬金術関係なくないですか?」

「気にしちゃ駄目です。世の中には気にしたらいけない事もあるのですよ」

 ……何かどっかで聞いた事あるような台詞だな。うっ、気にしちゃ駄目だ。気にしたら殺られる。

「て、言うかこの大会の首謀者もとい主催者って誰ですか?」

「? わたしのお母様ですけど、知らなかったのですか?」

 悟った。全てを。あの人だもん。

「とりあえず、決勝トーナメントの種目教えてください」

「はい。えっと、一回戦が料理対決……」

 ……りょーり? 錬金術関係ないじゃん。そりゃさ、大概のホムンクルスは家事を代わりにして貰うために創るけどさぁ……ねぇ。

「二回戦が、掃除対決……」

 ……今度は掃除か。メイド大会だよね。これもうさぁ……ねぇ。

「三回戦が、一般教養の筆記テスト……」

 ……テストっすか、ここまで来て。何考えてるんすか? あの人……ねぇ。

「準決勝が、トレジャーハント……」

 ……なんかさ、作為的な何かを感じる。神様かな? とりあえず上にいる人、頭上じゃなくて……気付いてるよね。

「決勝戦が、無差別バトルです」

 ……バトルだって。ははは、予想的中。何か錬金術師辞めたくなってきた。もういい、何も言わない。て〜か、突っ込む気力すら無い。いいよ、もう。何やったってそっちにしかいかないんなら。どんな横暴にも耐えきってやる。

「クロス君。何で泣いているのですか?」

 リリスさんが、心配そうにそして、心底わからなそうに僕の顔を覗き込んでいた。

 可愛い……いや、そうじゃない。実際、そうなんだけど。きりがないな。帰ろっかな、そろそろ。

「帰ります。それじゃあ」

「はい。さようなら」









「ただいま」

 ……やっぱり無反応。

「お帰りなさいませ。御主人様」

 でもなかった。

「あれ? シェリー姉さんに何もされてないの?」

「あの後ですか? お姉さまに体のサイズを測っていただいただけですけど」

 ……意外。あの姉さんが何もしなかったとは。天変地異の前ぶれ?

「体のサイズ測ってどうするの?」

「わかりませんけど……その後のお姉さまは不気味でした」

「……そっか。姉さんはどこ? 研究室?」

「はい。お昼が出来上がったので呼んだんですけど、返事がないんです」

「いいよ。姉さんは僕が引きずり出すから、シェリーは昼食の準備しといて」

「わかりました。御主人様」

 シェリーは踵を返すとトテトテっと、効果音を鳴らして走っていった。姉さんめ。

 それにしても……可愛い。

「おい、ロリコン。手出して性犯罪者になるなよ」

 後ろから声。こんな失礼な事を言うのはヤツしかいない。

「君も似たような物だろ、泉華。毎日、シェリー目当てで来ている同性愛者」

「何だ? 自分がロリコンだって事は否定しねぇのか?」

 僕は、何を今更と言う顔で泉華を睨みながら答えてやった。やったのだ。

「男が女形のホムンクルス創った時点でそう見られるんだよ。だから今更否定しない。君と違って一般的認知なんだよこれは。ところで、昼食食べていくなら速めにシェリーに言っとけよ」

「マジで! 食ってってもいいのか? やったー! シェリーオレの分もー」

 ヤロー人の話聞いてたのか? まぁ、昼食のくだりは聞いてたみたいだから許してやるか。

「うおぉー! シェリーの手りょーりー!」

 叫んでやがる……。

 さっきの小生意気なのは、泉華。なんとあのリリスさんのホムンクルス。どこをどう間違えたんだろう。いつも僕の家に来てはシェリーにちょっかい出してる。まったく、確かにシェリーは可愛いけどさ……もうちょっと接し方を……ぶつぶつ……。……はっ、またあっちに……何はともあれ、つまりはヤツが大会でのシェリーのライバルになるって事なんだけど……ちゃんと戦えるのかなぁ?

「あ……姉さん呼ぶの忘れてた……」









「……で? 何の用?」

「何の用って、とりあえず昼食と大会の事」

「大会って、『第二十七回。ドキッ、ホムンクルスだらけの錬金術大会。〜どこまで人に近づけるか〜』の事?」

「そう、『第二十七回。ドキッ、ホムンクルスだらけの錬金術大会。〜どこまで人に近づけるか〜』の事。てか、ながっ! 今更だけど。じゃなくて、何やるか聞いてる?」

「全然。ただ、目の前にいる敵を全員殺ればいいんじゃないの?」

「やっぱり……。とりあえず、かくかくしかじか」

「これこれうまうま……と、言う訳ね」

「そう言う事。あと、シェリーが昼食出来たって」

「あっ、クロスちょっと待ちなさい」

「何だよ、姉さん」

「一応確認するけど、予選が千キロ遠泳に五千キロサイクリングレースと一万キロマラソンで、決勝トーナメントが順に料理、掃除、筆記テスト、トレジャーハント、無差別バトル、でいいのよね?」

「いいけどさ……何でいちいち言ったの?」

「だって、その方が字数稼げるでしょ」

「字数って……関係ないと思う」

「関係あるわよ。引っ張れた方がハショるとこハショれるでしょ」

「ハショるって……」

「いいのよ。上の都合だから。第一、かくしか、これうまのくだりだってフルでいく予定だったけど……上がだれたのよ」

「つうか上って何? 誰?」

「上は上よ。分かり易く言うと神様よ。あ、作為的な何かを感じたらきっとこれの仕業だから」

「分かったような、分からないような」

「いいから、それより昼食でしょ? 行くわよ」

 姉さんと僕は昼食をとるため居間に向かった。そして、固まった。

「遅かったなお前ら」

「すみません。御主人様にお姉さま。泉華さんが全部食べてしまって……」

「ぶっ殺す……」

「姉さん、ストップストップ。殺っちゃダメだよ」

「五月蠅い!」

――ズバコォーン。

 クロスは力尽きた……。

 ……て、おい。









「と、言うわけで大会当日よ。よい子のみんなは、いきなり? とか思っちゃダメよ」

 いきなり?

「思っちゃダメって言ったばかりでしょう? クロス君?」

「すみません。でも無理ですよ。だって十日くらい前に姉さんにノックアウトされて、気がついたらこれですもん」

 そう、僕が気絶――逝っていたか?――していた間にいつの間にか大会の日になっていた。

「ところで何で僕縛られてるんですか?」

 そう、僕は自分の周り……もとい、風景の描写が苦手だから言わなかったが、何故か縛られていたりする。

「マリアちゃんが邪魔しないように、って縛っておいていったのよ」

 嗚呼、なるほど。

「って、なにゆえぇー!」

「なんでもね。シェリーちゃんにね、あんなことやこ〜んなことをしたんですって」

 あ、あんなことやこんなこと?

「ちゃんと教えてくださいよ! お願いですから」

「大会中に分かるって言ってたけど……だから縛ったのね」

 なんかこの人、一人で納得してる。

「もういいです。でも、せめて縄ほどいて下さい。逃げたりしないですから」

「い・や・よ。せっかく都合のいい玩具が手に入ったって言うのに、それをみすみす手放せって言うの?」

「言います」

「て、言うか貴方に拒否権は無くてよん」

 こ、こんにゃろ〜。

「と、言うわけで、今大会中はわたしの玩具よ。よろしくね」

「それでいいっすよもう」

 恨んでやる。呪ってやる。毒電波送ってやる……シェリー助けて……ぐすん。

 その後、彼の行方を知る者は誰もいなかった……。

 ……また、そのネタ?









「予選始めるわよ〜」

 ……一時間後。

「決勝トーナメント進出者決定よ」

 はやっ、本当にアノ三種目やったのか?

「決勝トーナメント進出者は……えっと、シェリーちゃんに泉華ちゃん。後は掲示板見てね。は〜と」

 ハショんなよ! って言うか、いつから、僕の心の声は突っ込みに……いや、むしろ僕はどこから見てるの?

「それじゃぁ、決勝トーナメントは一時間後ね。遅れちゃ、ダ・メ・よ」









――ドスッ。

「はぐっ」

 誰だよ、どてっ腹に蹴りくれさったのは。

「いい加減起きなさい」

 こ、この声は……。

「姉さ……ん?」

「そうよ。このビューティホーな顔を忘れたの?」

「じゃあ、あれは夢?」

 夢か……我ながらいい推理だ。あの破天荒な日々も夢なら納得できる。

「夢って何が?」

「いやね、姉さん……」

 僕は今まであった事を一つ一つ姉さんに言っていった。『第二十七回。ドキッ、ホムンクルスだらけの錬金術大会。〜どこまで人に近づけるか〜』などと言うふざけた名前の大会に出ることになったことや、その大会の可笑しすぎる内容、その日起こった事。もちろん、姉さんにノックアウトされたことも。その後、いきなり大会が始まって、学園長の玩具にされた挙げ句、その大会のアノ予選がたったの一時間で終わってしまった事などいろいろ話した。

「大雑把に言うとこんな感じかな」

 僕は姉さんに掻い摘んで説明した。終始姉さんが笑っていた事が気になるけど……。

「あんた、アホ? 全部現実に有った事でしょ。勝手に夢オチにしてんじゃないわよ」

 ははっ、現実かぁ……はぁ。

「なに項垂れてんのよ。もう決勝なんだから少しはシャキっとしなさい。シェリーの保護者でしょ」

「えっ、決勝? ほ、他の試合は?」

 そう聞くと姉さんは僕の目の前で呆れて見せた。なんかさ……むかつく。

「あんたが逝ってる……寝てる間に全部、殺っとい……勝っといたわ」

 なんか、危ない単語が……。

「じゃあ、この後は……無差別バトル?」

「当然でしょ。さあ、リリス……待ってなさいよ……今度こそぎったんぎったんのめっためた……もとい、完全勝利させて貰うわ。ふふふ、あっははははは……」

 怖いから……姉さん。









「それじゃぁ〜『第二十七回。ドキッ、ホムンクルスだらけの錬金術大会。〜どこまで人に近づけるか〜』の決勝戦始めるわよ〜ん」

「長いから大会名言うの止めません」

「そんな事を言うクロス君には、お仕置き、ど〜ん」

「んぎゃぁぁぁぁーー」

「世の中にはね、言って良い事と悪い事があるのよ。覚えといてね。はぅと」

「今のなんですか? もの凄く痛かったですけど」

「そんな事を気にするクロス君には、お仕置き、レベルトゥ〜、ど〜ん」

「ぎょえぇぇぇぇーー」

「世の中にはね、知らない方が幸せな事もあるのよ。覚えましょうね。はぅと」

「そういえば、学園長の名前って何ですか? 聞いた事ないし」

「そんな事聞くクロス君には、お仕置き、レベルスリ〜、ど〜ん」

「にょはぁぁぁぁーー」

「世の中にはね、聞かない方が幸せな事もあるのよ。覚えたかな。はぅと」

「なんか、変な快感が……。ところで、学園長の年齢って……」

「そんな事知ろうとするクロス君には、お仕置き、レベルマックス〜、ど〜ん」

「ぶきょぉぉぉぉーー」

「クロス君は、先生の事をそんなに敵に回したいのね? まったく、世の中にはね、知っちゃいけない事もあるのよ。覚えたわね?」

 はぅとが無い!? しかも、目が笑ってない! や、殺られる!?

「ふぅ〜。こ〜んな馬鹿な事やってないで、選手入場よ〜」

 今度から学園長には絡まないようにしようかな、命がいくらあっても……。

「赤コ〜ナ〜、わ・た・しの娘にして最高の錬金術師リリスちゃんのホムンクルスの泉華ちゃんよ〜」

 リングアナで私情挟みすぎ。

「つ・ぎ・は、青コ〜ナ〜、わ・た・しの娘にして最高の錬金術師であるリリスちゃんの自称ライバルのマリアちゃん……え、違う?出てるのはマリアちゃんだけど、ホムンクルスはクロス君の? え〜っと、ホムンクルスのシェリーちゃんよ〜」

 途中で分からなくなったから無理矢理切ったな。

「え〜と、基本的に何でもありだけど反則はしちゃダメよ」

 何でもありで反則もくそもあるのか?

「とりあえず、レディーファイトよ〜。どんどん殺り合ってね。はぅと」

――カーン。

 ゴング、しょぼっ!

「シェリー、とりあえず殺っちゃいなさい」

「オーケー、ボス」

 ボス?

「泉華ちゃん、頑張ってね」

「わかってるよ。でも、相手はシェリーだからな……はぁ」

 愛しの、が抜けてるぞ愛しの、が。

 そうこうしてる間に戦局は思わぬ方向へ進んでいった。シェリーが泉華を組み伏せたのである。

 ……まあ、予想してたけど。あの同性愛者がシェリーに勝てるわけがない。それに、シェリーは姉さんに調教されて普段とは別人だしさ……はぁ。

 その後、シェリー有利で進んでいったが、遂にリリスさんが最終兵器を繰り出した。

「泉華ちゃん、絶対零度キャノンよ」

「あれやんの……しょうがねえな」

 そう言うと泉華の腕が変形していった。待てよ……変形?

「シェリーこっちも応戦よ。怨念砲!」

「了解、ボス」

 怨念ねぇ……それにしても、シェリーのキャラ変わりすぎ。

 二人の腕から凄まじい閃光が……もはやホムンクルスじゃないって。二人とも。まぁ、錬金術でもないけど……。

 ちょっと待てよ……あの怨念砲ってどう見ても火炎だよね。対するリリスさんのは絶対零度……反作用? 下手したら爆発するよねぇ。て事はデンジャー? ここ危険?

「三十六計逃げるが勝ち!」

 僕は身を翻して逃げ……

「どこ行くの〜。ま・さ・か逃げる気じゃないわよね〜」

 られなかった。

 いつの間にか学園長に捕まっていた。

「学園長なら分かるでしょ? あれ、爆発しますよ」

「分かってるわよ〜」

「じゃあ、何で掴んでるんですか?」

「死ぬときは一緒よ〜」

「いやーーーーー」

 その刹那、

――ちゅっどーーーん。

 ……クロスの意識は途絶えた。

 三度これか〜!









「……いい加減、起きなさい」

 ……あれ? どっかで見た光景。

「いくら夏休みだからって、遅くまでゲームのやり過ぎよ」

「姉さん……?」

「そうよ、ほらちゃっちゃと起きる。朝ご飯片づかないじゃないの」

 なんか違和感。

「ねぇ、シェリーは?」

「は? 誰、それ」

「だから、ホムンクルスのシェリーだよ」

 その言葉に姉さんは心底呆れた顔をした。

「まったく、こんなゲームを夜遅くまでやってるからそんな夢を見るのよ」

 そう言う姉さんの手の中には『アルケミストすと〜り〜』と書かれたゲームが握られていた……ん?

「ゆ、夢?」

「そうよ、大方、錬金術師になる夢でも見たんでしょ」

 ビ、ビンゴ……じゃなくて。

「って事は、全部……」

「夢だったんじゃないの?」

 結局、夢オチかよーーー!

 おしまい、ちゃんちゃん。







「終われるかー!」

「言う事聞かないクロス君にはお仕置き、レベルインフィニティー、ど〜ん」

「みぎゃぁぁぁぁーー」

 ……夢じゃなかったの?

「夢からでも干渉できるのが、学園長の凄いと・こ・ろ。は〜と。これでホントに終わりよん。はぅと。じゃあね〜。チュ」

 ……認めない。

「何か言った?」

 いえ、なにも。



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あとがき

ばかみてぇ(爆
何がしたいんでしょうか? 私は。

半年ほど前に書いたものを何気なしに加筆・修正して載せてしまいました。
何ていうか読んでて疲れました。
確かこれを書いてるとき物凄く体力を消費した覚えがあります。
ギャグって書いてて面白いんですけど、疲れるんですよねぇ。

そういえば、相棒がこれはギャグじゃなくてコメディだと言ってました。
ギャグとコメディの違いは何処に? とか思ってます。

何はともあれ、読んで下さってありがとうございます。
できれば感想なんかをメールや掲示板でいただきたいです。
それでは、白犬でした(あとがき長いなぁ……



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